みなさん、こんにちは。稲葉浩志さんの従兄弟の「稲葉なおと」さんが10月3日に新刊を発売されます。タイトルは「ゼロ・マイル」。この本は、「Drive to the Hotel FLORIDA」というタイトルで、株式会社USENの会報誌「With Music」に小説を掲載、その続きをUSENの朗読放送チャンネル「J-21耳で読む文芸/ミステリー」で放送するという独特の展開が各方面で話題となりました。
 稲葉のお母さんから宜しくとPR用のチラシを受け取りました。私も買って秋の夜長を楽しみたいと思っています。
●amazon、楽天ブックでのご購入はこちらからどうぞ!
http://www.usen-magazine.jp/wm/0-mile.html
イナバなおとさんのインタビュー記事はシチズンのホームページで見られます。
http://citizen.jp/campanola/index.html



今年の8月に新しく出来た、津山のフリーペーパー「NETWORK SAKUSHU」から稲葉なおとさんの新刊「ゼロ・マイル」を抽選で5名様にプレゼント!なおとさんの直筆サイン入りです。書籍のご提供はイナバ化粧品店さんです。
下記の応募方法でどしどしご応募下さい。
■応募方法
官製はがきに「稲葉なおと・ゼロ・マイル希望」とお書きの上、●あなたのお名前●ご住所●TEL●E-mail(お持ちの方)を明記の上、下記までお送り下さい。抽選で5名様にプレゼントいたします。
●宛先/〒708-0014岡山県津山市院庄948-12 有限会社ネットワーク作州・読者プレゼント係
●締切/平成20年11月27日(木)消印有効
●当選発表/平成20年11月27日(木)
※当選者にはメールでご案内致します。また、このページでも発表致します。

稲葉なおとさんの新刊「ゼロ・マイル」の当選者を発表致します。
全国からたくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。本日、ネットワーク作州さんで厳正な抽選をしていただき、下記の方々が当選となりました。当選の方にはメールでお知らせをいたします。近々に稲葉なおとさん直筆のサイン入り「ゼロ・マイル」が届きますので、楽しみにお待ち下さい。おめでとうございました!
抽選に外れた方は本当に残念でした。ご応募ありがとうございました。
■当選者
松尾麻由子様/兵庫県高砂市 村岡さゆり様/東京都国分寺市 横山紋子様/岡山県真庭市 中島美香様/岐阜県関市
岡 晃子様/和歌山県紀の川市

以上、5名の方々が当選となりました!おめでとうございます!




稲葉なおとさんの「ゼロ・マイル」が掲載されていたUSENのWith Music


 その家は津山という町のこぢんまりした商店街に建っていた。
「実家」という言葉の意味さえよく理解できていなかった幼い頃、ぼくは毎年正月になると両親に連れられて、東京から父の実家と呼ばれるその家に泊まりに行った。駅からほど近い商店街なのにすぐ先には太い川が流れ、道を挟んだ反対側はそのまま山の斜面へと続いていて、もしかしたら狸や猪が隠れているのではないかと何度も眼を凝らしたのを覚えている。
 その家には玄関がなく、化粧品店の石鹸の香りが漂う商品棚の合間を縫って奥へ歩くと、いつの間にか煮物の匂いが鼻をくすぐる台所の入り口に身を置いているという不思議なつくりの建物だった。ちらほらと雪が降る日に津山に着くとぼくには密かな楽しみがあって、それは商店街から挨拶もそこそこに建物の中を台所の突き当たりまで歩き、裏口の戸をそっと押し開くことだった。開けた瞬間すぐ足もとから遠くまで一面真っ白に染まった畑を目の当たりにするという体験は、窓の外にはお向かいの棟が立ちはだかる東京の団地住まいであったぼくに、まるで未知の世界へとつながる扉を開けてしまったかのような感動を与えてくれた。
 東京から不思議な家への道のりは、丸一日かかるほど子どもには負担の大きい旅だった。けれども当時のぼくがそれを苦に思うどころか冬休みになるといつも津山に向けて出発する日を心待ちにしていたのは、ちょっと塩気のある黒豆入りの餅をこんがり焼いて腹一杯食べられることと、その家に住むふたりの少年と遊ぶのが楽しみだったからである。
 ぼくの父は三人兄弟の長男で、ふたりは三男の子どもだった。ひとりがぼくのひとつ年下、もうひとりが五つ下だった。上の子とは年が近かったせいで、よく遊びつつよく喧嘩もした。お年玉として買ってもらったばかりのジャングル大帝の漫画本を手にしたその日にビリビリに破り合ったこともあった。台所で始まった取っ組み合いの喧嘩のリングが裸足のまま雪の敷かれた畑に移動していたこともあった。半泣き顔で相手のセーターを引っ張り合うぼくと上の子を、少し離れた安全な場所から、なんでこのふたりは寒いのにこんなところで掴み合っているんだろうとでもいいたげに、ぽかーんと眺めていたのが下の子だった。
 雪合戦をしてもプロレスごっこをしても五歳下の子はいつも「ミソッカス」という肩書きでしか仲間に入れてもらえなかったのだが、ただひとつこのミソッカスにはぼくと上の子がどうしても真似できない得意技があった。炬燵を置くとさしてスペースの空いていない和室の隅で、下の子が両手両足を大きく広げてポーズをとるとおとなたちはその様子に注目し、両足がまたたく間に空中で美しい弧を描く側転を成功させると間近でサーカスでも見たかのようなやんやの喝采が起きるのだ。ぼくも上の子もミソッカスに主役の座をうばわれてなるものかと同じように両手を広げてアピールするのだが、次の動作は下の子のように奇麗に宙を舞うどころか無様に縮こまった足が空をもがくだけで、おとなたちからは拍手ではなく笑いが起きてしまいサーカスのピエロ役に甘んじるしかなかった。頬を引き攣らせるぼくと上の子に下の子は別に自慢するでもなく、部屋の隅でまた自分のやりたい時に自分のタイミングでその技を何度も成功させていた。もしも当時のぼくがもう10歳ほど年上だったら、クールな奴だな、とでもつぶやいたことだろう。
 やがて、老舗和菓子会社の五代目社長となる上の子の名を、伸次といった。
 炬燵の置かれた和室からドーム球場の特設大ステージへと舞台を替え、数人の親戚から数万人のファンへと観客を増やし、日本を代表するミュージシャンとなる下の子の名を、浩志といった。
 あの頃のあの家のことをふと思い出す時、ぼくの眼にはいつも、ふたりの少年の姿が白い景色とともに浮かんでくる。


 

  『近代名建築で食事でも』
明治政府の近代化政策とともに世に送り出され、昭和初期にかけて建てられた貴重な近代建築。高級フレンチから学食まで、今なお生き続け、愛されている東京の近代建築で、食事と喫茶を愉しみながら、撮り、書き下ろした体験をオールカラー写真とともに語る建築鑑賞紀行。(白夜書房、2200円+税)

 

  『アール・デコ ザ・ホテル』
パリ、ロンドン、上海、サンタモニカ、……。ホテルを旅する紀行作家が、10都市余りを訪ね、泊まり、撮りおろした、著者初めての写真集。 1920年代以降、世界に伝搬した美の様式アール・デコが、今もって人々を魅了し続け、都市生活に息づいていることを生き生きと伝える。(求龍堂、2600円+税)

 

  『巨匠の宿』
著名な建築家が手がけた、知られざる24の名建築の宿。蔵王に建つ丹下健三設計の共済組合宿泊所、安藤忠雄設計の1泊2000円の公共の宿、ル・コルビュジエ設計の修道僧と寝食を共にする修道院……。著者が1軒1軒泊まり歩き、撮影した美しいカラー写真とともに綴るエッセイ集。(新潮社、1890円税込)

 

  稲葉なおと/Naoto Inaba 作家・写真家
東京工業大学建築学科卒業。一級建築士の資格を持つ。
1998年、短編旅行記集「まだ見ぬホテルへ」(日本経済新聞社)を刊行。以後旅行記と写真を発表し続ける。
2001年、長編旅行記「遠い宮殿―幻のホテルへ」(新潮社)で第10回JTB紀行文学大賞奨励賞受賞。
2006年、資生堂ギャラリー及びハウス・オブ・シセイドウにて初の写真展を開催。
2007年、USEN会報誌「With Music」にて初の長編小説「Drive to the Hotel」を連載開始。